「どんな香り?」と聞かれて、好きなのはわかるのに、うまく説明できない。お茶や香水を前に、そんなふうに言葉を探すことはありませんか。
香りの説明に迷うとき、普段使っている言葉にも目を向けてみると、面白い発見があります。ジャハイ語を話す人たちは、においを色と同じように言葉で表したのです。マレー半島で話されるジャハイ語の研究は、「感じていること」と「それを言えること」を分けて考える手がかりになります。
「何のにおい?」と「どんなにおい?」
りんごを見て「赤い」と言うとき、私たちは色の特徴を伝えています。「赤い」は、りんごにも、服にも、屋根にも使える言葉です。
一方、香りには「りんごみたい」「木のような」と、ものの名前を借りることがあります。こちらは、相手も知っていそうなものを挙げて伝える方法ですね。
ジャハイ語には、特定のものの名前を挙げずに、においの特徴そのものを呼ぶ言葉があります。色に「赤い」「青い」があるように、においにも共有できる呼び名がある。そう考えると、少し身近に感じられるでしょうか。色のたとえは、言葉の働きを説明するためのものです。
香りにも、色のように答えられた
2014年に発表された研究で、Asifa MajidとNiclas Burenhultは、ジャハイ語を話す人と英語を話す人に、においと色を自由に言葉で表してもらいました。
比較すると、ジャハイ語の参加者は、においを色と同じように表すことができたのに対し、英語の参加者にはにおいの命名の難しさが見られました。香りを言葉にする取り組みやすさに、話す言語による違いが見えたのです。研究概要:ルンド大学

この研究からは、言語によって香りの表し方にも豊かな広がりがあることが見えてきます。私たちがものの名前を探す場面で、においの特徴を表す言葉で答えられる人もいるのですね。
香りに気づいてから、言葉を見つけるまで
たとえば、二つのお茶を前に「こちらのほうが、甘い香りがする」と感じる。そのあとで「花のような甘さかな、それとも果物かな」と、ぴったりの言葉を探す。身近なお茶の場面に置き換えると、香りに気づくところから、人に伝えるまでの流れを思い描きやすくなります。
今回の研究が調べたのは、この流れの中の「感じたにおいを、どんな言葉で表すか」という部分です。鼻の感度を知るには、どれほど薄いにおいまで感じ取れるかを調べるような実験が必要になります。言葉を覚えることで嗅覚が変わるかを知る場合も、学ぶ前と後を比べる調査が必要です。
言葉を探している時間にも、「甘い」「すっきりしている」といった印象は手がかりになります。まずは自分が感じたことを一つ。その印象に似合う言葉を、ゆっくり選んでみましょう。

伝えるときは、同じものを思い浮かべられる言葉で
ここからは、いつもの会話で香りを伝えるための小さな提案です。相手も知っていそうなものを一つ添えると、どんな香りを感じたのか、一緒に思い浮かべやすくなります。
「柑橘っぽい」と感じたら、「みかんの皮をむいたときに似ている」と話す。「甘い」だけでは伝えにくければ、「焼いたお菓子を思い出す」と続ける。実際に自分がそう感じたときに、使える言い方です。
二人で同じお茶を飲んでいるなら、「私はこう感じたけれど、どう?」と聞いてみてください。相手の答えが違っても、どの特徴に目を向けたかを話すきっかけになります。表現の例をもっと見たい方には、色や手触りから香りを伝える記事もあります。
香りは言葉で伝えられる。ただ、その表しやすさは、使う言葉によっても違う。次に「いい香り」の先で迷ったら、まずは自分が思い出したものを一つ添えてみてください。専門的な名前を探すより、相手と同じ香りを思い浮かべるための、具体的な一言から始められます。
参照:Majid, A. & Burenhult, N.(2014), Cognition 130(2), 266–270. DOI: 10.1016/j.cognition.2013.11.004。色やお茶の例、会話の提案は内容を身近に説明するための編集上の例です。画像は、記事の内容を身近に思い描くために制作したAI生成イメージです。

