ミントの香りを感じたときの「スーッ」。この感覚を、単に爽やかな匂いと呼んでよいのでしょうか。実は、香りを感じる仕組みと、冷たさや刺激を感じる仕組みの両方が、身近な香り体験に関わっています。今日はメントールを入り口に、その面白さをのぞいてみましょう。
匂いだけでは説明しきれない「スーッ」
米国の研究機関NIDCDは、匂いの体験には、目・鼻・口・喉などの神経終末が関わる化学的な感覚も影響すると説明しています。玉ねぎの刺激や、メントールの清涼感がその例です。「甘い香り」「草のような香り」という嗅覚の印象と、「冷たく感じる」という感覚は、分けて見ることができます。
2002年、冷たさとメントールに反応する受容体が報告された
McKemyらが2002年にNatureへ発表した研究では、三叉神経の感覚ニューロンから、メントールに反応し、低温によっても活性化する受容体が調べられました。当時CMR1と呼ばれたこの受容体は、TRPと呼ばれるイオンチャネルの仲間です。冷たさを感じる仕組みを、分子の働きとして理解する重要な手がかりになりました。

TRPM8という名前が、二つの刺激をつなぐ
この受容体はTRPM8として知られています。2007年のNature掲載研究でも、低温やメントールなどの化学物質に反応するチャネルとして扱われ、環境の冷たさを捉える役割が調べられました。「温度」と「ある化学物質」が同じ感覚の入り口に関わる。そこに、メントールが冷たく感じられる面白さがあります。
ここでいう清涼感は、感じ方の仕組みの話です。室温や体温を下げることとは区別して考えると、研究が何を明らかにしたのかが見えてきます。
香りのノートに、二つの欄をつくってみよう
ミントを思わせる香りに出会ったら、「どんな匂いか」と「どんな感覚か」を別々に書いてみましょう。前者は青い葉、甘さ、ハーブらしさ。後者はスーッとする、軽く感じる、といった自分の表現で。すでに製品としてつくられたものを表示どおりに使い、濃さを上げる実験をせず、普段の体験を観察するだけで十分です。

感覚に名前がつくと、香りの世界が広がる
「爽やか」の一言にも、果皮の明るさ、葉の青さ、清涼感など、いくつもの要素があります。仕組みを少し知ってから香りを振り返ると、好きだった理由を別の言葉で説明できるかもしれません。研究の知識を、身近な感覚を楽しむための道具にしてみてください。
出典:NIDCD「Smell Disorders」/McKemy et al., Nature 416, 52–58(2002)/「The menthol receptor TRPM8 is the principal detector of environmental cold」(2007)。
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アイキャッチは、ミントの葉とガラスで清涼感を表現したAI生成イメージです。

